補綴修復治療

 歯列矯正やホワイトニングは、自分の歯を綺麗に並べたり白くしたりする治療で、これだけで終われば理想的と言えます。これに対して、これから説明する補綴修復治療は、自分の歯にセラミックの歯を被せたりする治療で、大抵は歯を削らなければなりません。どんなに慎重に治療しても、歯は削れば弱くなります。虫歯でない健全な歯に美容目的で補綴修復治療をおこなう時は、その事をしっかりと理解した上で選択する必要があります。

 


ポーセレンラミネートベニアとダイレクトベニア

 

 

 


 この症例は歯に縞模様が見られ、全体に透明感が無く特有の色を呈しています。これは、幼児期にテトラサイクリンという抗生物質を使用した副作用による物で、昭和40年代生まれの人に多く見られます。ホワトニングでは綺麗にできない典型的な症例です。

 このような場合、以前はポーセレンラミネートベニアという方法で治療するのが主流でした。これは、歯の表面を少しだけ削って、下の写真のような、ちょうど付け爪のようなセラミックの薄いシェルを張る付ける方法です。すべて行うと、前歯だけでも全部で12本のセラミックの歯を使用することになり、かなり高額な治療となりますが、シェルが薄いので元の歯の色が透けて見える感じになり、費用をかけたほどの美しさは得られませんでした。

 これに代わる治療法として、ダイレクトベニアという方法があります。これは、歯の表面に高品質の樹脂を直接盛りつけていく方法で、仕上がりはポーセレンラミネートベニアよりやや劣りますが、治療費は当院では2分の1以下で済みます。
 上の写真(冒頭の写真)は、まず上の前歯6本をダイレクトベニアにて修復した所です。ご本人の希望により、歯は全く削っていません。少し歯を削ると、下の写真のように色も形もさらに自然に仕上げることができます。歯並びも多少は改善できます。(さらに白く美しくしたい方は歯を削ってセラミックの歯を被せる治療法がありますが、歯を小さく削らなければならないのでお勧めはできません。「矯正と歯科治療」の項をご参照ください。)

 

 

 


多少の空隙歯列(すきっ歯)もこの方法なら、歯を全く削ることなく改善できます。この場合は、歯の表面全体に樹脂を貼り付けるのではなく、継ぎ足すような治療になります。
この治療法は先ほどのダイレクトベニアに対してダイレクトボンディングといいます。

それでは、すきっ歯に対して行ったこれら2種類の治療をお見せしましょう。

歯と歯の間にすき間があり、すきっ歯の状態です。ポーセレンレミネートベニアで治療することになりました。

セラミックでできた薄いシェルです。これを歯に接着していきます。

接着したところです。非常に美しい仕上がりにできました。歯はほんの少ししか削っていません。このように元の歯の色に問題がない場合は、ポーセレンラミネートベニアは非常に美しい仕上がりになります。

こちらはダイレクトボンディングで治療しました。ポーセレンラミネートベニアの美しさにはかないませんが十分な美しさに仕上がっていると思います。耐久性もポーセレンラミネートベニアにかないませが、費用は2分の1以下でできました。歯はほとんど削っていません。長所としては料金が安いことの他に、 割れたりした場合、ポーセレンラミネートベニアは修理ができないので作り直すことになりますが、ダイレクトベニアやダイレクトボンディングは修理ができます。

セラミッククラウン

 審美歯科治療で最もポピュラーな方法は、歯を削ってセラミックの歯を被せる方法です。全く同じ白さでも、紙の白さ、プラスチックの白さ、陶器の白さはすべて違って見えますね。現在、歯の白さを最も表現豊かに再現できるのはセラミックです。そして、セラミックは通常、変色することはありません。そのため、審美歯科治療では、セラミックによる修復が中心となります。

 従来から、セラミックは脆いので単独では欠けやすいという欠点がありました。そこで、内側に芯として金属を使用し、それにセラミックを焼き付けて強度を確保したメタルボンドが広く普及しています。

 それに対して、すべてセラミックでできた物はオールセラミックと呼ばれ、中に金属が入っていないので、光の透過性に優れ、メタルボンドよりも美しい歯が作れます。また、オールセラミックは金属を使用していない為に、金属アレルギーの心配もありません。このように審美歯科の観点からは非常にすぐれたオールセラミックですが、脆くて割れやすい性質の為に、適応症が限られていました。

 これらの長所を併せ持つのが、最近登場した次世代のオールセラミック、「ジルコニアボンド(ジルコニアポーセレン)」です。これは、上述のメタルボンドのメタルの代わりに、人工ダイヤモンドとしても使われるジルコニアを使った物です。これは、美しさと強度を兼ね備えた優れたオールセラミックで、今後セラミック修復の主役となっていくでしょう。

 

 

 

 

上の写真は左右とも左から順に、従来のオールセラミック、ジルコニアボンド(ジルコニアポーセレン)、メタルボンドです。外から見るとほとんど変わりませんが、光の透過性が違うので、実際に削った歯に装着した時は透明感にかなりの差があります。

 セラミック修復治療は、真ん中の歯を1本だけ修復するのが最も難しい治療です。もう1本の真ん中の歯とほんの少しでも違っていると、すぐに判るからです。このような困難な条件での3種類のセラミック治療を比較してみましょう。(なお、色調の再現性は材料のみで決まるものではなく、様々な条件が関係してきます。実際の診療では、個々の症例に応じて患者様と相談して決定します。)

メタルボンド

矢印の2本の歯がメタルボンドで、他は天然歯です。このように、自分の歯に透明感が無い場合は、メタルボンドでも十分に再現できます。この写真は当院で装着後10年以上経過していますが、セラミックはこのように、何年経過しても変色しないのが特長です。

オールセラミック

矢印の歯がオールセラミックで、他は天然歯です。オールセラミックではこのように透明感のある歯でも容易に再現できます。ただし、脆いと言う欠点があります。

ジルコニアボンド

矢印の歯がジルコニアボンドで、他は天然歯です。ジルコニアボンドはこのように透明感のある歯でも再現できます。オールセラミックのような脆さもありません。

 このほかに、最近の話題として、e.max(イーマックスと読みます)やオールジルコニアがあります。これらのセラミックは従来のセラミックと比較して強度が強く、安価であるという特徴から、人気急上昇中です。ただし、色がほぼ決まっていて微妙な調整ができないので、前歯を1本だけ修復する場合には向いていません。奥歯の銀色が気になる人にぴったりです。特にe-maxは、色自体は美しいので、前歯をすべてセラミックにしたい人で、価格を安く抑えたい人にも向いています。

 

 

 

 

銀歯のところを元とほぼ同じ形でジルコニアボンドとe.maxに作り替えました。両方ともe-maxにしても十分審美的です。この例のように、e.maxは被せる形でも詰める形でも適しています。費用もリーズナブルなので、奥歯では最近、e.maxを選択する人が多くなっています。

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こまい歯科医院
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