歯の移植

 虫歯が進行して歯が抜けてしまった場合、通常は「インプラント」「ブリッジ」「部分入れ歯」のいずれかの治療を行うことになります。これらの治療法については、「インプラント治療へのご招待」の項で詳しく説明していますので、ご参照ください。

 この項ではやや特殊な治療法として、「歯の移植」について説明致します。口の中で相対的または絶対的に役に立っていない歯があれば、その歯を抜歯して歯が抜けたところに移植することができるのです。役に立っていない歯には、親知らずや、歯列から飛び出して生えている歯、矯正治療の一環として抜歯される歯などがあります。

 移植された歯は、以前は数年程度で脱落することが多かったのですが、最近では問題点やその解決方法が明らかになり、10年以上の歯の生存はごく普通のこととなっています。



奥歯に痛みを訴えて来院されました。斜めに生えた親知らずが奥の歯にぶつかっています。奥の歯は根っこの深いところで虫歯が進行しています。この位置で虫歯が進行していると、たとえその奥の親知らずを抜歯しても残すことはできません。親知らずは虫歯になっていますが移植には十分に使えそうです。虫歯の歯に痛みがあったので、この日は歯を削って上の歯と当たらないようにしました。

虫歯の進行した奥歯は抜歯し、後ろの親知らずも抜歯して移植しました。負担がかからないように頭を削ってあります。移植した歯は神経が死んでしまいます。死んでしまった神経は体にとっては有害物となり、移植失敗の原因になります。そのため、死んだ神経が悪さをする前に、移植後数週間で死んだ神経を除去して根の治療をする必要があります。

神経を除去して根の治療をした後、銀歯を被せました。移植後どのくらいの期間で歯が被せられるかは、症例によって違います。この症例では3ヶ月弱で被せました。

 この症例では隣の親知らずを移植しましたが、移植の条件に合えば、上下左右のいずれの歯も移植することができます。以下の2つの条件を満たせば、この治療は保険適用となります。

(1)抜歯したところに移植すること。つまり、来院時に既に歯が抜かれている場合は保険ではできません。

(2)親知らずを移植すること。親知らず以外の歯を移植する治療は保険ではできません。

 たとえ親知らずが残っていても、根の形が移植に適していなければ移植はできません。この場合でもほかに移植に適した歯があれば移植は可能です。また、来院時に既に歯が抜けているところにも移植可能なこともありますが、これらはいずれも保険外治療となります。移植が保険外治療となるケースではその上に被せる歯も保険ではできません。


このように、歯の移植は保険外治療となることがほとんどですが、ご自身の歯を移植するこの治療法は、インプラント治療に抵抗がある方にも受け入れて頂けるのではないでしょうか。費用も保険が適用できない場合でも、インプラント治療と比較するとずっと安く済みます。

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