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上顎洞が近接している人

「顎の骨の解剖学」で、上顎では上顎洞という空洞がインプラントの埋入を困難にしている事をお話ししました。ここでは、上顎洞についてもう少し深く理解して頂き、その後で治療の実際について説明したいと思います。上顎洞について忘れてしまった方は、もう一度「顎の骨の解剖学」を開いてみて下さい。



(1)上顎洞の解剖学


 上のパノラマX線写真を見て下さい。上顎洞が下方に張り出していて、その下には骨は数ミリしかありません。この症例の骨の状態を立体的に理解する為に、CT画像をお見せしましょう。下の写真は撮影されたCT画像をコンピューターで再構成し、立体画像としたものです。



上顎の骨を下から見たところ
上顎の骨の内部を上から見たところ

 左の写真は上顎の骨を下から覗いた様子です。丸で囲んである所は、歯が抜けて無くなっている骨の部分です。右の写真は同じ骨の内部を上から覗いたところです。
 左の写真のように、骨を外から見ると骨の固まりのように見えますが、実際は右の写真のように、骨の内部はほとんど空洞である事がわかります。この空洞が上顎洞です。上顎洞を取り囲む骨面には、上顎洞粘膜という粘膜が張り付いています。そのため上顎洞という空洞は、粘膜に囲まれた空洞になっています。

(2)上顎洞底挙上術

 埋入されたインプラントは、しっかりとした骨に囲まれていなければなりません。ところが、上のような症例にインプラントを埋入すると、インプラントは上顎洞に突き抜けてしまいます。そのため、このような症例では「上顎洞底挙上術」という手術を行います。これは上顎洞の中に骨を作る手術です。


 上顎洞の内面には上顎洞粘膜が張り付いています。その粘膜を骨面から剥がして上方に移動させます。すると上顎洞粘膜は上の写真の黄色の線の様に挙上され、骨と上顎洞粘膜に囲まれた空間ができます。この空間に骨補填材(骨が出来るのを助ける材料)等を入れます。これが上顎洞底挙上術です。その結果、下の写真の様になります。


 この症例では、上顎洞底挙上術と同時にインプラントを埋入しています。数ヶ月後には、骨補填材の所に骨が出来ます。

(3)サイナスリフトとソケットリフト

 上顎洞底挙上術には2種類の方法があります。「サイナスリフト」と「ソケットリフト」です。
 サイナスリフトは上顎洞の横(頬の側)の骨を除去して上顎洞粘膜を露出させた後、上顎洞粘膜を骨面から剥離して挙上する方法です。上の症例はこの方法で行っています。



上顎洞の外側の骨を除去して
上顎洞粘膜を露出させたところ。
上顎洞粘膜を剥離して、上方に挙上させたところ。
この空間に骨補填材等を入れます。

 この方法は上顎洞が下方に大きく張り出していて、その下の骨の高さが比較的少ない時に行います。比較的高度な技術を要し、後述のソケットリフトと比べると確かに患者様の負担も大きい術式ですが、上顎洞粘膜を確実に挙上してしっかりとした骨を作れるので、長期的予後の安心感はソケットリフトの比ではありません。
 サイナスリフトにはインプラントを同時に埋入する「同時法」と、まずサイナスリフトを行って、骨ができた後にインプラントを埋入する「段階法」があります。上の症例は同時法の限界です。上顎洞の下に残っている骨が、これより少ない時は段階法で行います。サイナスリフトを行ってから骨が出来るまで、少なくとも半年はかかります。段階法はその分治療期間が長くなります。

 ソケットリフトは次の様にして上顎洞を挙上します。まず上顎洞に突き抜けない様に注意して、インプラントを埋入する為の穴を掘ります。その穴に骨補填材を押し込んでいくことによって、上顎洞粘膜を挙上します。最後にインプラントを埋入します。
 このように、サイナスリフトと比較して非常に簡便で、患者様の負担も少ない方法ですが、この方法には上顎洞粘膜を骨面から剥離するという作業がないため、上顎洞粘膜の挙上量に限界があります。言ってみれば、上顎洞粘膜が風船のように膨らんで挙上されている状態です。(全く剥離されない訳ではありませんが)また盲目的な作業の為、あまり無理をする事はできません。
 基本的にこの2つの術式は、上顎洞粘膜の挙上量が少しの時はソケットリフト、大きく挙上する必要がある時はサイナスリフトを行います。


この症例は左上(向かって右上)にインプラントを埋入する予定ですが、ここまで読んでこられた皆様は、上顎洞の位置はおわかりですね。上顎洞の下にこの程度の骨の高さがある時は、ソケットリフトで対応可能です。


ソケットリフトをして、インプラントを埋入しました。黄色の破線が上顎洞の境界線、黄色矢印がソケットリフトで挙上した部分です。ソケットリフトはこの程度の挙上量の時に行うのが基本です。


いかがでしたか?上顎洞が近接している人の治療について、「サイナスリフト」の「同時法」と「段階法」、それから「ソケットリフト」について理解できましたか。上顎洞は歯が抜けてから長期間放置していると、どんどん下方に張り出してくる性質があります。そのため上顎にインプラントを埋入する時は、上顎洞底挙上術が必要な頻度がとても多いのが現実です。

 


 サイナスリフトはGBRと同様、患者様にとってはできれば避けて通りたい手術だと思います。それに比べてソケットリフトは、インプラントの埋入だけを行うのとほとんど変わらない負担ですみます。術者もなるべくソケットリフトで済ませたいのです。しかし、上顎洞底挙上術はインプラント関連手術のなかでも比較的失敗症例の多い手術で、そのほとんどはサイナスリフトのできない術者が、骨の少ない症例に無理にソケットリフトで対応したために起こっています。
 インプラント埋入手術や関連手術は、安易な方法を選択したり無理をしたりしなければ、非常に成功率の高い方法が既に確立されているのです。何事もきちんとした手順で、確実に行っていく事が大切です。
 サイナスリフトはGBRと比較して、腫れる事は少ない手術ですが、多少腫れる事はあります。手術部位の痛みはほとんどありません。ただし、手術時に口角を長時間引っぱり続けなければならないので、口角が切れる事があります。

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